クリスマスを持て余しているウジ虫な諸兄のために、休日もディスクユニオンとチキン亭くらいしか通うところのないオレッチが送る年間ベストアルバムTOP10の続き。


せっかくなので少し余談をします。ミュージックマガジンの年間ベストだけ本屋でチェックしたんですが、英国ロック部門でクリブス一位ってすげーな、おい。
毎年、あそこの2ページだけ極端な絶望感を漂わせていて読んでて複雑な気持ちになったりならなかったり。
俺が読み始めて今まで「今年も満場一致の傑作はなかった」みたいなフレーズがなかったことがない。見えない何かと戦いすぎだろ。


Clare and the Reasonsの人が大絶賛していたJosh Mease『Wilderness』はmyspaceで聴く限り破格の傑作ぽいのであとで調べる。
こういうランキングって現役のミュージシャンのが面白いの挙げるよなぁ。例年くるりの岸田が書いていた記憶のある枠がトクマルシューゴさんの物になっていました。

(※随時更新)

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10.Lily Allen/It's Not Me, It's You


ポップ・センセーション、世代の代弁者、ファッション・デザイナー、政治活動家、口うるさいクソったれブロガー、過激なセックス・エキスパート、酒乱、タブロイド誌の標的、マイスペースの女王、露出狂、わがまま勝手なプリマドンナ、スタイル・アイコン、セレブのガールフレンド、セレブの娘、セレブの姉、パパラッチの獲物、パーティ仕掛け人、プリンセス。などなど、リリー・アレンの呼び名は数知れず・・・

↑こういうゴシップガールな面や≪♪♪そう、なぜなら変わらぬ、わがままリリーだもの・・・♪♪≫な観方は結構どーでもよくて(歌詞も気にならない)、
それより現代のポップシーンを代表する名プロデューサー、Greg Kurstinさんの手腕にひたすら呻らされる一枚。
スカやグライム的要素が後退して世間の評価は下がってるっぽいが、これだけ人懐っこければそれも関係ないかと。


というか、さっきそのグレッグさんのwikiを読んで、参加したアルバムの一覧を見たら腰抜かしそうになった。偉大。
今年を語るうえで最重要アーティストの一人である、リルブーことLittle Bootsも、
急に誰も話題にしなくなった(オイオイ)The Bird And The Beeもみんなこの人のお仕事。
このままエレポップの時代がずっと続けばいい。




9.The Happy Hollows/Spells


前に一度取り上げたことのある3ピースバンドの待望のフルアルバム。
まずはこの記事だけご覧になっていただけば大体の方がファンになって然るべきかと思います。エロくて涎が出そうだ。
音のほうは往年のThat Dogなんかも彷彿させるイキのよいパワーポップ
過去のEPはやや地味な印象もあったが今作で皮一枚剥けて、自信をもって薦められるバンドになったかと。
日本では完全無視状態ですが、amazon他輸入盤店では現状入手不可なので仕方がない。バンドのmyspaceかiTunesStoreで買うしか。
今年多少話題になったReal EstateThe Drumsなんかとも一緒にツアーに回っていたりもするのになぁ。






8.Micachu/Jewellery


さっきから本人たちのmyspaceにも掲載されているmixtapeを聴いているんだが、これが不穏で仕方がない。本当に落ち着きがない。
影響を受けたと言い張るのはharry partch、本作のプロデュースはあのマシュー・ハーバート、
そして掻き鳴らされる改造バンジョー。本当に意味がわからない。顔もカワイイ
出来すぎているかんじもしないでもないが、歪すぎるポップセンスはこれから期待大。
ちなみに彼女らもイギリスのミュージシャン。きちんと掘り下げれば間違っても不作なんてデタラメなこと言わないってば。





7.Vivian Girls/Everything Goes Wrong


前作もよかったはよかったんだけど(ドラムがデブなところとか)もう一声!と油断してたら
大して間髪おかなかった本作で一気にエモいメロディが書けるバンドに大変身。
サーフバンドの影響が色濃く、おまけに本人達もIQが低そうなのもあって一気に信頼の置ける人達に。
来日公演@o-nestも見たけど可愛かった!
MIKA MIKO亡き今、しばらくは彼女らにゾッコンになりそう。



6.Hank/The Family Album


本当は再発なのだが音源化は今回が初ということで2009年扱いで。
今年は本当に再発が充実していたが、そのなかでもプロダクションデシネさんによる一連のレイ・ワンダー再発は特筆されるべきだろう。
採算より音楽への愛情。陽の当たるべきバンドにこうして再評価のきっかけを作られるのは本当にイイこと。


レイ・ワンダーはカーディガンズやエッグストーンに代表される90年代スウェディッシュ・ムーブメントのなかでも
一際群を抜いてプロフェッショナルで捻くれまくった偉大すぎるバンド。
そして本作はそのレイ・ワンダー解散後に中心メンバーのヘンリック・アンダーソンが結成したものの音源を残すに至らなかったバンドの未発表音源を集めたアルバム。
レイ・ワンダーよりエッジの効いた太い音を鳴らす最高の一枚。待望すぎて泣いたよ。


他の再発もかなり行き届いた仕事をされているので、最低でもベスト盤の入手だけでもここでお薦めしておきたい。
新譜という括りを抜きにしてよければ、この一枚が今年の年間ベスト。全曲名曲。愛情溢れる選曲に大感動。


スーパー・ワンダー(ザ・ベスト・オブ・レイ・ワンダー)

スーパー・ワンダー(ザ・ベスト・オブ・レイ・ワンダー)



5.Dirty Projectors/Bitte Orca


かつてローファイで小難しい音楽をやっていた連中が本作でようやく胸を張ってポップと呼べる音に。
割とリアルタイムで追っていたので何よりそこに感動。
各地で大絶賛ですが、複雑すぎるギターの絡みにレイヤーの如く重なる女声コーラス、
ツェッペリンばりとも評されるドラミングに、過剰にリリカルなデイヴ・ロングストレスの歌声と、
文句なしで今の米インディーシーンを代表すべき傑作。
個人的にはモノトーンな感触に満ち満ちた前作のほうが好きですが、
2009年に聴いた音楽で殆ど唯一新しさを見出した気がします。



4.Prefab Sprout/Let's Change The World With Music


待望すぎたプリファブの復活作…というよりは形となったお蔵入り音源。
経緯は既に多くで語られたとおり。どういうきっかけであれ、こうして形になったことにまずは感謝。
そして本作で聴ける音は間違いなく最も油の乗っていた時期のパディによるもの。
見方によってはこれをもって最高傑作と見なすこともできそうな、極上のロマンに満ちた曲群。


ただ、やっぱり…このアルバムは1人で作ることを前提としてスタートしたわけではないので、
ところどころどうしても粗が目立つ。それは紛れもない事実。
音色が古いのなんて気にしない。そんなのは「アンドロメダ・ハイツ」の頃からずっとそう。
ただ、パディも手ぐせのある作曲家なので、どの曲も「ここでウェンディのコーラス入れたかったんだろうな…」という箇所が必ずあって、
コッチもプリファブは何百回何千回と(大袈裟)聴いてるのでどうしてもそれがわかってしまう。
というより、頭のなかで鳴ってしまう。コーラスが勝手に。それが悲しすぎる。


体調面の問題もあって何やら引退も仄めかしているらしいが、
これだけの曲を今でももし書けるなら止める理由はどこにもないわけで。
ライブなんて一切やらなくていいから、一度だけでいいので現役感溢れる作品を残してほしい。
20年近く前から最新の音楽をあまり耳にしないことでも知られるパディだが、
後進たちはきちんと彼の曲を聴いていて、たとえばLINDSTROM辺りも本作を年間ベストに挙げていたりもするので、
こういう人達と作った作品を聴いてみたいけどなぁ。
まだチャートにカムバックする可能性は消えてないと思うんだ。