ぎゃ、ぎゃ、ぎゃーーー!僕が(そしてたぶん結構な人数の音楽ファンが)世界で一番愛しているバンド、Prefab Sproutの8年ぶりの新譜が来年2月にリリース!?
パディ・マクアルーンはソロ作「I Trawl The Megahertz」(大傑作!)の製作後もお耳やお目目の病気を患っていたと噂で聞いていましたが、ある程度は回復したんだろうか…今年一番のビッグニュースだ!しかも記事には「some of the best songs Paddy has written!」ってあるし!


Kings of Rock N Roll: Best of

Kings of Rock N Roll: Best of

昨年、唐突に発売された二枚組ベストに詰まった曲の全てが(というか全アルバムの全曲が)、他のソングライターを比較対象にしてしまうのが可哀想になるくらい、最高にロマンとアイディアの詰まった曲群で、これより素晴らしい曲が一曲でも出来上がってしまったら失禁するしかないんですが…

どうしてこのバンドが一番好きかって言われてしまうと悩んでしまうんだけど(だってトーマス・ドルビーによる80年代シンセが前面にバリバリ押し出しまくってるアレンジとか、今の耳で聞くと辛いもの…もちろんファンはそこがいいんですが!古びてない!はず!)結局はフロントマンのパディのなかで培われた世界が彼のなかで肥大しまくって、その歪みきった妄想世界が、途方もなく美しいメロディでもって奏でられるからなのかなー。
とりわけ、90年代以降は感覚が世間の流行ととズレまくってるんですが(今のところの最新作『The Gunman and Other Stories』(02年作)はタイトル通り、カントリー&ウエスタンっぽさを前面に押し出した、どうやってもメインストリームでは売れない趣味性の強い音楽なのに、そのときのインタビューで「僕はヒット曲を書きたい。リンキンパークジャスティン・ティンバレイクとデュエットして、ビルボードを席巻してみたい」とか言い出したり)、そんなところも大好き。箱庭ポップ愛好家の僕にとって、彼ら(というか彼)の音楽が最高峰。

といっても聞いた事のない人にはピンとこないでしょうが、とりあえず2曲。



Prefab Sprout - Hey Manhattan!


パディとバンドの紅一点、ウェンディ・スミスのコーラスがサビで重なる「Hey Manhattan! Doobie Doo」のフレーズが美しすぎる名曲ですが、この曲を書いた時点で、記憶違いでなければパディはマンハッタンに一度も足を運んだことがないのだ。これは、彼が影響を受けたバカラックスティーリー・ダンやプリンス等のアメリカ音楽や、大量に読み漁ったアメリカの小説から得た情報を基に、彼の脳内に作り上げられた素晴らしいアメリカという勝手なイメージに対する賛歌。後にジェシー・ジェイムスについての曲も書いたりする彼ですが、アメリカへの羨望が変な方向にアウトプットされていて、なんかそれだけで泣けてくる。そんな理想郷なんてどこにもないのに。



Prefab Sprout - Cruel


オザケンの歌詞でも追求された、実によくわからない初期の十八番のヘンテコリン・ポップ。スティーリー・ダンの影響モロだしな転調に転調を重ね、冴えまくったメロディより実際不器用さが目立つ楽曲。
この曲が収録されているファースト・アルバム『Swoon』は他のも「凝りまくってて面白いけど若気の至り全開」な曲のオンパレード。(次作『Steve Mcqueen』でトーマス・ドルビーの手腕で洗練されて、かなり聞きやすくなった)
当時、勃興しつつあったネオアコとかの流れで一部のイギリスの音楽誌で絶賛されたものの、どうやったって先物買いの目ざとい音楽ファン以外にはシンドイ作品だと思う。けど、パディはこの作品が出来上がった時点で、本気でマイケル・ジャクソン『スリラー』越えのギネス級セールスを確信したらしいのだ!凄すぎる!
実際、僕はこのアルバムの思い切りと不器用さが愛おしすぎてもう。青臭さ、泣きのメロディこそポップスの最大の魅力だとして、この作品以上に青臭いアルバムがあるなら誰か教えて!僕のなかでは出会ってからここ数年間、ベストの一枚です。

Swoon

Swoon