音楽ブログやってる人のあいだでは「上半期の10枚」というものを選ぶのが習慣化しているみたいですね。
更新も少ないことだし、たまにはそういうことをやってお茶を濁してみることにしましょうか。新譜は常日頃からそんなに聴かないので、人様のお役に立つ自信はありません。順不同。


Volume One

Volume One

女優業の片手間でなく、歌心と内省的なオタク心に富んだ3分間ポップを矢継ぎ早に繰り出す脅威のアルバム。
「音楽的技法は出尽くした!」なんて言われるご時勢だからこそ、こういった作品は高く評価するべき。
M・ウォードは一人で作業するよりこういった形でバックアップするのが向いている人なのかも。


Third

Third

僕みたいにそれまでこのバンドに興味のなかった層まで惹きつけた魅力は、ベス・ギボンズの歌よりも充電期間に勉強熱心だったバンドの面々の成果の賜物でしょう。
誰でも聴ける範囲でアバンギャルド。この匙加減が大物の風格。


TEENAGER

TEENAGER

楽曲の充実度が光る。編集し放題の環境でひねくれポップをやらない手はないわけで。誰かの陰謀とも言えなくないプロデュースワークが冴え渡る好盤。こんな曲をもっと多くの人が聴いてくれたら。


Rip It Off (Dig)

Rip It Off (Dig)

誰が聴いても耳にうるさい無駄なフィードバックノイズに2008年現在でも時代性を感じてしまう不思議。
無防備なアマチュアリズムに愛おしさすら覚える。


Jim

Jim

まさしく出世盤。mixiにすら取り上げられるポピュラリティを玄人ミュージシャンが獲得した功績は大きい。
さりげなく充実したソウルフルな曲のなかで、ときおり顔を見せる打ち込みアーティスト特有のドライブ感がなんとも気持ちいい。


Hercules & Love Affair

Hercules & Love Affair

DFAが今でも影響力を持っていること自体に驚いてしまうが、今年はこのアルバムに限らず重たいメランコリックさの浸透したエレポップに良盤が多い印象を受けています。
複雑さを競う時代はもう過ぎ去ったんでしょう。オウテカの新譜なんて全然ピンとこなかったし。


E 18 アルバム

E 18 アルバム

スウェーデン発、インストの「スウィンギン・オルゴール・バンド」。90年代の一時、流行したモンド系にも通じるチープさと、単なる和みで終わらない隠れた攻撃性が素晴らしい。人力でこの箱庭感!


Come Into My House

Come Into My House

あるいはスティーリー・ダンまで喩えに使えそうな洗練さと、インディー的遊び心・牧歌性を兼ね備えた素敵アルバム。
P:ano界隈の人の音楽は全部面白いみたいです。


ジャイアント・クラブ

ジャイアント・クラブ

ねじれた楽曲のなかに潜まる仏教精神がどこまで本気なのかまるでわからない、掴みどころのないアルバム。
どの楽曲にも最低一度は確信犯的に引っかかる部分があって、歌詞を手にとって読み取りながら答えの出ないナゾを深読みするのが結局、一番正しい聞き方なんでしょうか。購入してから騙されるように何度も聴き返しています。



(日本ではほとんど流通してないです。ここから買えます)

『JUNO』の公開で日本でもアンチフォークの世界観が浸透した今でこそ、もっと広く聴かれるべきはDitty Bops。
アメリカ中を自転車横断でツアー」とか「農場巡りしながらツアー」とかやってるうちに最大手のワーナーから切られ、やりたいようにやったらジャケにはギミック満載。
遊び心溢れるジャケと対照的に、楽曲は過去の作品と比較すると暗いトーンに包まれ、世の中を蔑み嘲笑し、ヒッピー一歩手前の楽観者の立場で、ニヒルな上から目線の歌詞が歌われる。
冴えきった頭で見渡す単調な世界のなかで、かけがいのない光明のような一点をハプニングや色恋沙汰から発見する少女性こそ、最もリアリティをもっているように思うんですが。