SPARKS

kitiku32008-07-29

とりあえず先に書いておくと、今回のフジにおけるSparks、人生ベスト級のライブでした。もともと音楽聴き始めのころから好きなバンドだし愛着もあったんですが、筆者ただいま22歳で一応最近の音楽も古い音楽もそれなりに齧ってる立場からしたら、2008年現在の音を圧倒的にオリジナルな状態で出していることに感動。といって自己満足に終わらずヒットメドレーも披露してくれるなど(これらの曲の強度が物凄かったのは、やっぱり事前に行われてた全アルバム再現ライブのおかげですね)、昨今の集金目的再結成ブームとは百万光年離れたところで勝負してるなぁ、と。
ここまで趣味性と実験精神とポップさが同居している人たちってのは、30年前の世代の人らでは他にちょっと思いつかないです。趣味性だけならいくらでも名前出てくるんですが。ルー・リー…、ニール・ヤ…
時間帯もほぼ大トリということで、若い客層も大入り。前列はmixiスパークスコミュで馴れ合って記念写真を撮るような、いかにもニッチポップ好きそうなファンが中心ぽかったですが、後ろのほうは盛り上がって踊ってたりしたみたいですね。
過去にフランツフェルディナンドがリスペクトしてると話題になったときでさえリバイバルされる気配はありませんでしたが(彼ら編集のベスト盤の話はどこへ?)、良い音楽に素直な反応が返ってくるというのが健全な状態だろうなー、と。

以下は個人用メモも兼ねて、全曲動画つき感想。(セットリストは『渡辺電機(株)さんを忘れましょう。』(はてなっぽく書くとid:w-denki)の「うんこ」を参照に。終わってその場で速攻書き起こしてたのはスゲー!!)





開演前、中心に置かれてたベッドに堂々と入って寝付く兄ロン。イントロのコーラスが鳴る響くなか、何のひねりもなく目を覚まし(動画だと色っぽい看護婦さんが出てきたり豪華演出ですね)、キーボード前に座ると弟ラッセル登場。あんまり声出てないんじゃ?(ただでさえ最近のアルバムはヴォーカルに関して基本、多重録音やエフェクトでかなり肉付けしてる部分もあるので)と不安になったが、たぶんこの曲だけマイクの音量が小さかったか、歌いだしで喉のエンジンがかかってなかっただけでしょう。曲自体はまっとうに良いですよね。

兄が本を開きながらなにやら読み上げるも、もちろん英語なのでよくわからず。こういう溜めて溜めて盛り上がる!みたいなわかりやすい構成(曲としてはかなりヘンなんだけど)の曲が若い衆に特に受けてたような。最近の二作で良く使われるギターの音色って、センスとしては90年代的な古臭いものだと思うんだけど、随分カッコよく聴けるのは曲のよさなのかなー。弟よく動く。

かなり劣悪音質だが、フジでの動画があったのでそちらで。兄弟合唱ポーズ、無気力兄。やっぱライブにおいて大事なのはステージアクション。スパークスは今回の全メンツのなかでも、客観的に観てエンターテイメントな魅せ方をよくわかっているバンドではなかったかと(先述のGOTYEもフジでのお気に入りで真っ先にスパークスを挙げてたし)。曲自体は、去年〜今年辺り隆盛をほこったエレクトロ勢(エド・バンガーとか)の影響もあると見たほうがいいんでしょうか。薄っぺらいラブソングの美辞麗句に引っかかるなんて信じらんないよ、って歌。

曲のサビ部分に合わせて兄がゴリラのごとく(そして表情は全盛期落合のニヤニヤ笑いのごとく)客席向けて突進してくるアクションが最高だったんだが、それは動画見当たんないですな。サビと書いたけど、この曲は本人たちがよく言う「既存のロック・フォーマットを無視した」作曲法による典型的な構成ですね。
baby maxさんとかいう何人かわからない人の手によるリミックスも見つけたので、暇な方は聴いてみるとよいかと。感想はないです。

ステージ後ろのスクリーンにモリッシーの輪郭が浮かんだ瞬間、爆笑。すげえわかりやすい輪郭した人ですねモリ氏。さすが長嶋茂雄。スミス大好き彼女に何かと比較されて「あんまりくよくよされると困っちゃうよ、モリッシー」って嘆く男の歌。米国出身なのに英国やヨーロッパで広く愛された彼らなりのある種アンサーソングなんでしょうか。
高解消度のTVライブ映像はコチラ

スクリーンに表示されたピアノが移動、拡大縮小、コピペ、点滅とまさに「フォトショップ」されるのを懸命に追いかける兄。演奏なんてほとんどカラオケなのに、やはりこれもバカウケ。兄のキャラ素晴らしすぎる。

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今までの曲は全て今年出た新譜から。数回聴いた感じではやや地味に映ったものの、ライブも経験して耳に馴染んでくると最高傑作級の愛着が。曲展開と音圧のダイナミズムという点では間違いなく過去最高でしょう。たぶん今年のベスト。

EXOTIC CREATURES OF THE DEEP(DVD付)

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こっからヒットメドレー。2008年のスパークスも最高だけど、やっぱりセールスピーク時の、ラッセルが超人的ファルセットで歌ってる頃はたまらんですね。
せっかくなので、比較的最近の演奏(ふつうに歌えてるのが凄い)と、少しションボリな2000年の演奏ラッセルの髪の毛が今より少ない気が…)も。いかにも頭で考えた(ジャム演奏に因らない)パワーポップでいいですよなー。この曲、丸々全部サビみたいなもんだし。

声のトーンが低かったので一瞬、何の曲かわからなかったですが、実に大盤振る舞いな流れ!この曲も徹頭徹尾サビで贅沢だなー。若いパワーポップ勢がいくら束になっても叶わない曲の芳醇さよ。なんだかんだでアイランド時代の三作はズバ抜けてますね。
今年の「Propaganda」再現公演のときの映像はコチラ。(アルバムの曲順どおりなんだから当然なんだけど)この曲からスタートって痺れるね。

実はこの曲はフジ時には知らなかったんですが、ここにきて年齢相応ともいえるメロメロチューン。コアなファンのあいだで人気の高い一曲というのも納得。ベタな盛り上がりをラッセルの美声で!
アルバム「Introducing」のAOR路線は大不評だったらしいですが、どの曲も真っ当にカッコいいので再評価進められるべき一枚ですね!「Forever Young」とか「A Big Surprise」((株)先生も紹介されてたけど、本当に曲名どおりのサプライズ動画だ…)いいじゃないかー。

Introducing Sparks

Introducing Sparks

ライブではよく披露されているメドレーとのこと。どちらもいうまでもない大名曲ですが、「No1 Song〜」は後半の盛り上がりがバッサリとカットされてるのが少し勿体無いですね。にしても、キャリアが長くていろんなヴァリエーションの曲が用意できるってのは強みすぎますね(それこそ、事前に30数年分の持ち曲全部ライブしてきたわけだし)
関係ないけど「No1 Song〜」期のロンはいかにもニューウェーブ!ってかんじでたまんない。当時の高橋幸宏より遥かにカッコいいわー。

フェスだからってどこまでも盛り上がる曲ばかり!一曲も知らなかった皆さんもさぞ楽しかったことでしょう。この動画のロンのスタイリッシュさといったら!

一気に2006年まで繰り上がって最近の代表曲。ライブ前にロン演ずる前口上。ストリングスが暴力的に迫って(たぶん生演奏不可能)転調を何度も何度も重ねる、近年の実験結果が一気に爆発した大名曲。先に書いた時代遅れのギター・フィードバックがここでも大きく用いられ、ロンがスクリーンに立ったときのアクションも音と合わさって最高に気持ちいいし、若い世代にはこの曲が一番ウケたんじゃないでしょうか。「why the hell」のとことか、コール&レスポンスしやすいしね。

前作、「Hello Young Lovers」は大好きなアルバムで、他にも好きな曲はたくさんあるので(「Perfume」とか「Waterproof」とか)もうちょっと演ってほしかったかな、というのは本音。今回のセットリストで外せる曲はひとつもないけどね。


Hello Young Lovers

Hello Young Lovers

94年作。↑の動画みたいにロン踊ってくれりゃよかったのになー(2分半辺り)。いかにも当時のバブルガムな雰囲気が最高の名曲ですが、最近のラッセルのダンディ声で歌われてもいいかんじ。PVもかっこいいですね。

Gratuitous Sax & Senseless

Gratuitous Sax & Senseless

代表曲中の代表曲にして、ライブ締めのお約束。今さら語ることなどあるわけないので、カバーバージョンをいくつか順不同に。

British Whale(Justin Hawkins) …元ダークネスの人。PVにスパークス参加してるし。高音のところはエフェクトでごまかしてるものの、まぁ好カバー。
Siouxsie & the Banshees…パンク姉ちゃん。やっぱ最後の「And I ain't gonna leave」のleaveのところが常人には難関なのだな。
Faith No Moreマイク・パットンのバンド。バケモノなのでふつうに歌えてる。ギターの人は現・スパークス
Detectives…音程外しまくりのゴミカバー。他にもトーキングヘッズ「Life During Wartime」の文化祭カバーやイングリッシュビート「Mirror In The Bathroom」とかも持ち曲っぽいので、まぁオジサンの思い出づくりかなんかかしら。
素人ピアノ演奏…金髪美人が演奏してるなら結婚したい。
Pants…ハゲだらけの強面バンドで「Pants」って何の冗談だよ。
The Bar Steward Sons Of Val Doonican…カントリー/ブルーグラス風に。笑いながらやってるのは何というか。
おまけ…デブだからオレ達には狭すぎる!という曲ではない。

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スクリーンに映し出される過去21作のアルバムジャケをロンがライターで燃やしていくパフォーマンス。こうして振り返るとバカジャケの多いこと。で、最新作を前にしてライターを放り投げる、と。いいなぁ。

アンコールにこれまた代表曲。世界最強のパワーポップ・ソング。今まで何回リピートしたことか…
あんまり気の利いた動画が見つからなかったのは残念ですが、そのなかでも2000年ロンドンライブは本当に暗黒期だったんだなぁって雰囲気がムンムンしてますね。2000年でこれって。

KIMONO MY HOUSE (RE-ISSUE

KIMONO MY HOUSE (RE-ISSUE

最後は2002年のアルバム「Lil' Beethoven」から。郊外の金持ちのボンボンをコケにしたような、でも曲調は幸せムンムンな。時間タップリ演奏して、何度も客席に頭を下げ、寂しそうに去っていく兄弟の姿が印象的でした。また来てくれるよね。


ライブ光景については、mixiのコミュに紹介されてたココがやはり一番素晴らしいかと。